近年、産業界の様々な分野で、世界的にヴァーチャル ・リアリティ(以下、VR) ※1 や、オーグメンテッド ・リアリティ(以下、AR) ※2 を活用する動きが加速しています。
こういった動向に対応するため、陶磁器意匠研究所と文化財保護センターでは、3Dヴァーチャル技術の活用に関して共同研究を行っております。
令和4年度は、陶磁器意匠研究所が保有する3D機器を使用し、VRやARを作成することはできるのか、そしてどのような活用ができるのかを共同で研究いたしました。
※1 VR…仮想現実(Virtual Reality) コンピューター上に作られた仮想的な物体や空間などを、あたかも現実世界のように体験させる技術
※2 AR…拡張現実(Augmented Reality) 現実世界に3D データなどのデジタルコンテンツを重ねて表示する技術
3Dヴァーチャル技術活用研究会 文化財保護センター×陶磁器意匠研究所
オブジェクトVR・ARデータ
研究概要
Step1 3Dスキャナーを活用してオブジェクトVR・ARは作成できるのか?
陶磁器意匠研究所にある3Dスキャナーを使用し、オブジェクトVR・ARは作成できるのかを試し、 実際の作業手順を確認しました。

被写体
虎渓焼土瓶
・年代 :明治時代後期
・サイズ:口径10.4×器高10.5×胴径10.4×底径7.3㎝
・光沢 :なし
➡問題なくスキャンが可能。オブジェクトVR・ARへの編集方法の確認も行い、研究を進めることとした。
Step2 光沢のあるものに関してのスキャン・データ作成検証
3Dスキャナーは、光沢のある被写体をとることが難しいといった特徴があります。ではどれくらいの光沢までをスキャンすることが可能なのか、どういった条件だとスキャンがしやすいのかをいくつかの被写体で検証しました。

被写体
西浦焼染付ティーポット
・年代 :明治時代
・サイズ:口径5.9×器高12.0×底径11.6㎝
・光沢 :あり
▶まったくスキャンができない。

被写体
西浦焼上絵花瓶
・年代 :明治時代
・サイズ:口径8.8cm×器高25.0cm×高台径8.5cm
・光沢 :あり
▶絵付けが施されている部分はスキャン可能だが、磁器透明釉のみの部分が全くスキャンできない。

被写体
西浦焼赤絵金彩吹き徳利
・年代 :明治時代
・サイズ:口径1.4×器高18.9×底径7.3㎝
・光沢 :あり
蛍光灯の下では光沢があるとうまくスキャンできなかったため、暗室でスキャンを行い、精度を確認した。
➡暗室の方がスキャンがしやすい。
➡蛍光灯等、他の光源があると、表面の反射も映してしまうため、絵柄が綺麗にとりこめない。
Step3 大きいものに対するスキャン・データ作成検証
意匠研究所が保有する3Dスキャナーは、ハンディタイプのスキャナーです。このスキャナーで、どの程度の大きさのものであればスキャンが可能なのかを検証しました。

被写体
鉄釉四耳壺(祖母懐壺)
・年代 :桃山時代(16世紀)
・サイズ:口径11.5×器高36.2×胴部径31.2×高大径14.0㎝
・光沢 :なし
➡問題なくスキャンが可能であったが、スキャンする技術者の習熟が必要
Step4 3Dバーチャル技術の展覧会への活用に関する検証
本年度の研究会の集大成として、オブジェクトVR・ARがどのように活用できるかを検証します。 実際の展覧会で展示品と共に、オブジェクトVR・ARデータで展示品を閲覧できるようにし、今後の活用の可能性について検討します。

多治見のやきもの vol.5 市之倉
会場
多治見市陶磁器意匠研究所 展示室
岐阜県多治見市美坂町2-77
多治見市陶磁器意匠研究所 本館2F
日時
2022年1月27日(金) - 3月5日(日)
9:00 - 17:00