CONTACT

ENGLISH

3Dモデリング機器活用
造形技術向上研究会についてOutline of The Study Group

 多治見市陶磁器意匠研究所は、2018年10月に3Dプリンターを導入し、形状サンプル見本、樹脂原型として市内企業様を中心に活用いただいています。令和2年度から、陶磁器関連企業の皆様に更なる有効活用をしていただくため、当研究所デザイン室と岐阜県石膏型組合多治見・滝呂支部組合員有志9社との連携による「3Dプリンター・3DCAD活用造形技術向上研究会」を6月から開始しました。令和3年度には、3Dプリンターに加えて3Dスキャナーおよび3Dデータ変換ソフトを新たに導入し、「3Dモデリング機器活用造形技術向上研究会」と改名し研究会を実施しています。 研究会では、美濃焼製造の根幹を支える既存の石膏成型技術に加え、樹脂型と3Dモデリング技術の新たな活用方法について、現場に一番近い原型師の皆さんと現実的な観点から模索しています。

研究会員


岐阜県石膏型工業協同組合は、主として陶磁器用石膏型を成型する業界で組織されています。昭和31年、組合員数60名で発足設立され、美濃焼陶磁器業界と共に発展してきました。今回の研究会に参加されている、岐阜県石膏型工業協同組合の多治見支部5社と滝呂支部4社、合わせて9社の組合員有志をご紹介します。


岐阜県石膏型工業協同組合多治見支部











岐阜県石膏型工業協同組合滝呂支部









石膏型のできるまでHow to make a plaster mold for ceramic industry

 やきものは、土を焼いて形にします。土の乾燥収縮、焼成による収縮や形状変形など、様々な現象がやきものの製造工程で起こります。美濃焼製造の根幹を支える既存の石膏成型技術を持つ原型師は、求める形状が焼成後に正しくとれるように、原型の段階で、形状を拡大したり、焼成による変形を防ぐための成型を施します。この技術を習得するには、長年の経験と勘が必要です。実際にどのような技法や型の種類があるのか説明をします。

型の種類

 石膏型の製造工程においてできる型の種類は4段階に分けられます。最初に、求める形状である「原型」を作ります。陶磁器は生素地から焼成までに10~15%の収縮があり陶土の性質、焼成温度、焼成方法などを加味し、原型に反映させるため技量が要求されます。次に、原型を反転させ素地をつくるための使用型の原型にあたる「元型」を作ります。次に、素地を作るための使用型を量産するための「ケース型」を作ります。最後に、求める素地を量産するための型である「使用型」を作ります。石膏成型の制作工程においてできる型の種類は以下の4種類です。排泥鋳込み成形の石膏型で説明します。

量産の現場における石膏成形技法の種類

 陶磁器の器物を多量に生産するとき、石膏で成形用の石膏型を作り成形します。円形の器類は、機械ロクロ用成形型、角型など変形させた器類は、排泥鋳込み用成形型、圧力鋳込み用成形型でそれぞれ石膏の吸水性を利用して成形します。現在、量産の現場における石膏成形方法は主に「タタラ型成形」「押し型成形」「機械ロクロ(水ゴテ)成形」「ローラーマシン成形」「排泥鋳込み成形」「圧力鋳込み成形」の6種類です。これらの成形方法は求める器の形状、生産個数、生産設備などによって使い分けられています。


タタラ型成形 →
 
押し型成形 →
 
機械ロクロ(水ゴテ)成形 →
 
ローラーマシン成形 →
 
鋳込み成形 →

タタラ型成形

石膏型の上に板状にのばした土(タタラ)を乗せて、型に押し付けて成形する技法。小型で単純な形状を少量生産するのに適している。



 石膏型の上に板状にのばした土(タタラ)を乗せて、型に押し付けて成形する技法で、非回転体やレリーフがついた形状を小さな規模で量産するのに向いています。“パンのお皿”の型を例に、石膏型のできるまでを紹介します



押し型成形

 石膏の割型それぞれに板状にのばした土(タタラ)を乗せて型に押し付けた後、2つの割型を押し合わせて成形する技法。小型で単純な形状を少量生産するのに適している



  石膏の割型それぞれに板状にのばした土(タタラ)を乗せて型に押し付けた後、2つの割型を押し合わせて成形する技法で、非回転体やレリーフがついた形状を小さな規模で量産するのに向いています。陶製のオカリナ‘‘セラリーナ”を例に、石膏型のできるまでを紹介します。



機械ロクロ(水ゴテ)成形

 回転円盤に取り付けた石膏型に粘土を入れ、型コテ支持機に取り付けられているコテの外ゴテあるいは内ゴテを押し下げて、コテと石膏型のすき間に粘土を入れて水を潤滑剤として左回転で「動力と手技」で成形する技法。内ゴテ成形と外ゴテ成形があり、コテは木や鉄板でつくられ少量〜中量生産に適している。



   回転円盤に取り付けた石膏型に粘土を入れ、型コテ支持機に取り付けられているコテの外ゴテあるいは内ゴテを押し下げて、コテと石膏型のすき間に粘土を入れて水を潤滑剤として左回転で「動力と手技」で成形する技法で、石膏型とコテの隙間が求める形状の断面となります。お皿などの浅い器は内側を、お茶碗、丼など深い形状は外側が石膏の面になります。”利き猪口”の型を例に、石膏型のできるまでを紹介します。


ローラーマシン成形

 回転するコテの上下運動が機械化され、回転円盤状のコテで潤滑水を使用せずに石膏型に粘土を圧延して「機械式全自動」で成形する技法。大量生産に適している。内ゴテ成形(Cup)と外ゴテ成形(Saucer)がある。



内ゴテ成形


 回転するコテの上下運動が機械化され、回転円盤状のコテで潤滑水を使用せずに石膏型に粘土を圧延して「機械式全自動」で成形する技法。お皿などの浅い器は内側を、お茶碗、丼など深い形状は外側が石膏の面になります。Cup&Sucerを例に、Cup本体の石膏型ができるまでを紹介します



外ゴテ成形


 回転するコテの上下運動が機械化され、回転円盤状のコテで潤滑水を使用せずに石膏型に粘土を圧延して「機械式全自動」で成形する技法。お皿などの浅い器は内側を、お茶碗、丼など深い形状は外側が石膏の面になります。Cup&Sucerを例に、Sucer(皿)の石膏型ができるまでを紹介します。


鋳込み成形


石膏の吸水性を利用して、石膏型に泥漿(液状の土)を流し込み成形する技法。 少量〜中量生産に適している。

排泥鋳込み成形

袋状、中空の形状を量産するのに適した成形技法







  石膏型に泥漿を流し込み着肉後、泥漿を排出する事から付けられた名称。鋳込み成形法とも言います。徳利、急須、花瓶等袋物の成形に適しています。この成形方法の長所は、石膏型を脱型可能なように複数の部分に割り型にすれば、複雑な形状の成形が可能です。


圧力鋳込み成形

非回転体の皿、レンゲのような複雑な形状を量産するのに適した成形技法



2つ割り型


上下2つに分割できる。





4つ割り型


上下、側面左右4つに分割できる。







 石膏型を積み重ねその隙間に泥漿をエアーポンプで圧入、脱水硬化後脱型する方法です。求める外側、内側の形状の隙間に泥漿を圧入することから、二重鋳込み成形法とも言われます。泥漿を強制的に圧力をかけて注入するため、生素地は焼成時の変形が少なく正確な仕上がりの製品を得られます。上下2つ割りの型がよく使われていますが、上下・側面の4つ割りの型を例に、ドリッパーの石膏型ができるまでを紹介します。


両面型


上下2つに分割でき、型の両面に素地ができる。







 石膏型を積み重ね、型の両面の隙間に泥漿をエアーポンプで圧入し、脱水硬化後脱型する方法です。求める外側、内側の形状の隙間に泥漿を圧入することから、二重鋳込み成形法とも言われます。両面型は圧力鋳込み型の2つ割から派生した技法で、小さい素地を量産する際に使用型の型数を減らすために開発されました。